清明
辿りつけないから いや 辿りつく場所など ないのだと 私は 浮遊している それでいい のだと
何万回目かの夜明け前 何万本目かの煙草 前頭葉が 僅かに眠い 私は何を求めたのだろう 何も求めない
チエロの音に導かれてここまではやってきた ここまで ここの所 ここの命 ここ ここ ここ ただここに
ああやはり 言の葉は産まれない 遠いところ
エンディングノートを書くことで 最後の命を燃やす それは 明るい 眩しい行い
失われた者たちへ 失われた記憶たちへ うしなわれた うしなった うしないつつある うしないつづける
すべてを失えば たぶん私は 放たれる どこへ 解らない どこか遠いところ 彼方へ
それでも 夜明け前 私は 確かに 清明なのだ