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長期記憶

このからだが、このこころが、あわあわと息づいて、わたし、確かにある幸せの真っただ中にいたんだと思います。
目を閉じれば何でも見えました。遠いロシアの雪に埋もれた街並みも、そこをひた走りに走るテロリストの黒い馬のような影も。そしてまた、少し首をかしげれば、そこは南ヨーロッパの輝く海辺。人々は生き生きと笑い、はしゃぎ、恋をゲームし、失恋を楽しんでいます。
たとえ私のいる場所が、生きることとそれを拒絶する間に張り渡された、細い綱の上にあったとしても、私、それらが見えるうちは、たぶん、本当には絶望していなっかたんだと思います。
それにもう一つ、私の眼の奥でメラメラ燃えるオレンジ色の炎が、私の生きることの強い意志として存在していました。私、あらゆることが私に絶望しか与えない以上。そんな小さな生きることへの意志が燃えていることだけでも幸せだったと考えるんです。
わかるかしら。だから私、あえて幸せの真っただ中って言ったんです。
そして、今いる私の場所は。くさいわ。臭うでしょそこまで。何もかも腐っているんですもの。
この腐臭わきおこる小さな劇場。それでもやっぱり自分に幸せだと言い聞かせて突っ立っている私。
もっと拍手を。割れるような拍手を・・・・・・・・・・お願いします。


腕の付け根のたるんだ肉をさすると
帰ってくるわ、遠い日の気配
私だけに見えるものも見えないものも。ともにまぶしく輝くなかで
欲望だけはいつも暗かった。
それを夢と置き換えてみて、その舌触りの冷たさに短く震えた。
いいわ、今一度、命の底で、
夢を燃やして、ひそかに暖をとるわ。

1980年代全般。自動座。朝比奈尚行、作、演出「独眼蝉」のワンシーンです。
ふと、はっきりと、そのシーンを思い出しました。
セリフも歌も、完璧に思い出しました。
さっき飲んだ薬のことも忘れてしまうのに、体で覚えた大好きだったワンシーンは、長期記憶のひきだしの中にしっかりと記憶されているんですね。
時々そっと引き出しをあけて、にやりとしたいと思います。


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NOBUCHAN

全般は前般のまちがいです。失礼しました。
by NOBUCHAN (2008-07-29 08:18) 

ジュンタ

夏に凍える私も、暖をとろう。
by ジュンタ (2008-07-29 09:16) 

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