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キャデラック

テント芝居でキャデラックで登場した。鉄の芸術家ケンジロウと福生のいかがわしいアメ車屋に買いに行った。
本当はシボレーステーションワゴンインパラを買いたかったのだが、いろいろ書類上の問題で真っ黒いキャデラックが代車で届いた。100万円出して現金で買った。一番高い私の小道具。
その頃私の心は最悪だった。離婚直後。別の男とは泥仕合の末、嫌悪だけを残して別れた。名古屋に逃避行。娘を捨てた悔恨。右足靱帯挫傷でびっこ。右足は鬼門だ。
ステーションワゴンを舞台に一人で全国を放浪しようと考えていた。
死ぬことも。劇中死。
最後のシーンで骨のキリンに乗って登場し、手首を切る。仕掛けの血しぶきが噴き出す。金の雨降る中。
千秋楽には本物のカミソリを使おうとマジで考えていた。やんなかったから今生きている。
芝居の仲間の一人と、テント芝居の向き合い方について(たぶん)、思想的対立もあった。
真っ黒なキャデラックで九州まで走った。
ガソリンスタンドではやくざ屋さんごっこをした。「あねさん、どうぞお休みください」とちんぴら役のお兄さんがうやうやしくドアを開ける。サングラス掛けて待合室にふんぞり返った。内心ドキドキ。ガソリン代足りるかなー。なにしろ排気量8000ccなのだ。
40代だから決して若くはなかったけど、若かったなあ。
死ぬ気でいたのに遊んでた。
そういう勢いのある芝居はもうできないかもしれないけど、久し振りに本気になろうかな。
なんか人生ますます面白くなってきた。


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ワタナベ

おもしれえなあ。最近、読んだ小説より。
by ワタナベ (2008-09-26 09:50) 

NOBUCHAN

崖っぷちだったけど楽しゅうございました。
by NOBUCHAN (2008-09-26 09:56) 

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